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今から500万~200万年前、岐阜県美濃地方一帯は東海湖と呼ばれる巨大な湖の底にありました。そこに、周辺地域で風化した花崗岩などの成分が粘土となって流れ込みます。長大な時間の中で生成した湖底の粘土層は、深く堆積し、熟成していきました。その後の土地の隆起で地表付近に現れた多様にして豊かな土と、森林や水系に恵まれた自然環境が、美濃のものづくりの背景です。
 美濃地方の粘土は、バリエーションの豊富さが大きな特徴です。特に代表的なものに、木節(きぶし)粘土、蛙目(がいろめ)粘土、もぐさ土などがあります。木節粘土はきわめて高い可塑性をもつきめ細かい粘土で、グレーがかった色と、珪化木(太古の樹木が石化したもの)を含むのが特徴。蛙目粘土もやはり上質な白粘土で、木節粘土よりわずかに粒子が大きく、名称の由来になった石英粒を含んでいます。もぐさ土は歴史ある美濃焼の一種である志野焼などに用いられてきた土で、野趣あふれる独特の味わいをもちます。
 他にも美濃地方では、食器から建材まで幅広い製品の原料になる土が豊富に産出します。その土の成分を緻密に調合し、用途ごとに最適の陶土とするノウハウもまた、この地方で高度に発達してきました。原料のポテンシャルを創意工夫により引き出して、1300年もの昔から世界有数の陶磁文化をつくり上げてきたのです。
Mino Soilは美濃の採掘場から採取された素材としての粘土から始まります。2021年6月に行われた展覧会Vol.1「Archaeology of Mino」はStudio Mumbaiとのコラボレーションを行いました。